溶融亜鉛メッキとは?メリットや加工方法、デメリットの解決策
高い防錆効果で知られ、様々な建築物で使われている溶融亜鉛メッキ。特に、屋外で使用する鋼材については、溶融亜鉛メッキを検討することが多いかもしれません。そんな溶融亜鉛メッキのメリットやデメリット、加工方法などについて解説。また、溶融亜鉛メッキを上回る効果を発揮し、デメリットもカバーできる、塗装による防錆方法についてもご紹介します。
目次
溶融亜鉛メッキとは、溶かした亜鉛に鋼材を浸し、防錆加工を行う方法。
溶融亜鉛メッキはドブ付けメッキとも呼ばれ、高温で溶かした亜鉛に鋼材を浸し、防錆のためのメッキ加工を施すもの。溶融亜鉛メッキが鋼材を守るメカニズムには、「保護皮膜作用」と「犠牲防食作用」があります。
保護皮膜作用
鉄の表面に亜鉛の皮膜を作り、空気と接触しないようにすることで、鉄を錆から守るというもの。というのも、鉄が空気中の酸素や水分と化学反応を起こすことで、錆が発生してしまうからです。亜鉛メッキは、安定的に空気や水を通しにくい性質を持っているため、高い防錆効果を発揮することができます。
犠牲防食作用
もし、メッキ層にキズがついて鉄が空気に触れてしまった場合、錆が発生する可能性があります。そんなときも、溶融亜鉛メッキならキズの周囲の亜鉛が鉄より先に溶け出して、鉄の素地を守ってくれます。鉄の代わりに溶け出してくれるので、「犠牲防食」と呼ばれています。
溶融亜鉛メッキの加工工程
【1】脱脂
鉄鋼製品を苛性ソーダ水溶液に漬けて、表面に付着している油脂などの汚れを除去。
【2】水洗
素材の表面に付着している脱脂液を洗い流す。
【3】酸洗
塩酸または硫酸水溶液に浸して、表面の錆や黒皮(ミルスケール)を除去。
【4】水洗
表面に付いた酸洗液を洗い流す。
【5】フラックス処理
加熱した塩化亜鉛アンモニウム水溶液(フラックス)に浸す。これにより、素材の表面にフラックス皮膜を形成させ、酸洗後の錆の発生を抑える。
【6】乾燥
亜鉛の飛散(スプラッシュ)を抑えるために乾燥。
【7】メッキ
鉄鋼素材を、溶かした亜鉛浴に漬けて皮膜を形成させる。
【8】冷却
メッキを施した製品を温水で冷却。これにより、鉄と亜鉛の合金層の成長を抑え、安定したメッキ面をつくる。
【9】仕上げ
表面を平滑な状態になるよう処理。
電気亜鉛メッキとの違い
亜鉛メッキの種類としては、溶融亜鉛メッキのほかに電気亜鉛メッキという手法もあります。これは、溶かした亜鉛に鉄製品を浸し、電気を流して亜鉛の皮膜を形成させる方法。溶融亜鉛メッキと比べて皮膜が薄いため、防食性では溶融亜鉛メッキに劣る場合もありますが、素材の変形がしにくく、光沢のある美しい表面に仕上げることができます。溶融亜鉛メッキが建材など大型の部材に使われるのに対し、電気亜鉛メッキは、ビスやボルトなどの小さな部品に向いている手法です。
メリットは、高い耐食性に加え、均一にメッキが付着する点。
密着性が高く、優れた耐食性が長期的に持続
「保護皮膜作用」や「犠牲防食作用」により、高い耐食性を発揮する溶融亜鉛メッキ。亜鉛と鉄が反応して合金層を形成し、強力に結合しているため、メッキが剥がれにくいのも特長です。長期的に錆から守ってくれるため補修が少なくて済み、経済性にも優れています。
様々な形状の素材に、均一に付着
メッキ槽に浸すため、タンクやパイプのような内部が空洞の製品、複雑な形状の製品でも、均一にメッキが付着します。
鋼材のサイズによっては対応できない点、補修時の手間などはデメリット。
ドブ付けのメッキ槽に入らないサイズだと対応できない
溶融亜鉛メッキを施すためのメッキ槽のサイズは業者によって異なりますが、そこに入らないような大きな部材には、メッキを施すことはできません。
薄い部材では、歪みが発生することがある
高温の溶融した亜鉛に浸漬するため、薄い部材では熱によって歪みが生じることも。ある程度の板厚が必要となる場合があります。
黒皮除去に手間とコストがかかる
熱せられた鉄鋼が、冷める過程で表面に形成する黒い酸化皮膜が黒皮(ミルスケール)。黒皮の上にメッキを施すと剥がれてしまうため、溶融亜鉛メッキの際には黒皮の除去が必要です。そのため、黒皮除去の手間やコストがかかってきてしまいます。
海岸地域などでは耐用年数が短くなることがある
溶融亜鉛メッキの寿命は、置かれている環境によっても変化。海水の飛沫を受ける海岸間際の場所や、強い季節風により高い濃度の海塩粒子が飛来する場所などでは、耐用年数が短くなる場合があります。
現地での補修ができない
もし溶融亜鉛メッキが剥がれてしまったら、その場で補修することはできず、再度メッキを行う必要があります。そのため、対象となる部材をいったん取り外し、工場でメッキを施した後、再度取り付けるといった工程が必要。運搬費などもかかってきてしまいます。
溶融亜鉛メッキ以上の効果で、デメリットも解決できる、塗装での錆止め方法もある。
防錆性に優れた溶融亜鉛メッキですが、さらに高い効果が期待でき、デメリットも解決できる方法があるのをご存知ですか?鋼材用の防錆塗料・タフジンク-11と仕上げ塗料・SSA-1000を使った塗装です。こちらは、未来建築研究所から販売されているタフマックスNeoシリーズの水性・無機塗料。
「塗装は、溶融亜鉛メッキに比べて効果が劣るのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、この製品なら、溶融亜鉛メッキよりも高い防錆性が得られ、溶融亜鉛メッキでは対応しづらいケースにも使用できます。
溶融亜鉛メッキを上回る防錆効果
タフジンク-11の防錆メカニズムは亜鉛粉末が塗膜を形成し、腐食から鋼材を守るというもの。また、溶融亜鉛メッキ同様に「犠牲防食作用」も働くため、傷が付いても錆びません。従来の重防食塗装とは、仕組みや効果が異なります。さらに、溶融亜鉛メッキの場合、水や塩化物などが加わると犠牲防食により大量に亜鉛が溶出し、白錆の発生が早くなりますが、タフジンク-11は亜鉛の溶出が少量。白錆の発生も遅く、赤錆発生を遅らせることができます。仕上げ材のSSA-1000を重ねることで耐久性や耐候性が高まるほか、調色も可能です。
※溶融亜鉛メッキとタフジンク-11の複合サイクル試験の結果。都立産業技術研究センターにて、1サイクル8時間で実施。
大きな部材でも錆止め加工できる
塗装による防錆処理なので、メッキ槽のサイズに左右されることがなく、大きなサイズでも対応可能。公共建築における、大型の外壁部材での採用事例もあります。
黒皮の上から塗装でき、コストや手間を削減
黒皮の上に塗装しても剥がれず、高い防錆力はそのまま。溶融亜鉛メッキに必要な黒皮除去の工程を省くことができ、コスト面でも有利になります。
●新設鋼材でのコスト比較
塩害が気になる地域でも効果を発揮
塩害地域にある鉄道橋での採用事例では、20年以上経っても塗り替えなしで防錆力を発揮。錆が出やすいボルト部分でも、錆の発生が抑えられました。
他にも、表面温度が300℃程度まで上がる工場のダクトでの採用事例もあり、過酷な環境での防錆にも対応します。
現地で塗装でき、溶融亜鉛メッキの上からでも塗装可能
補修の際も、溶融亜鉛メッキのように部材を取り外したりせずに、現地で防錆処理が可能。溶融亜鉛メッキの上からでもお使いいただけます。
水性無機塗料だから、環境にやさしい
CO2を含まない無機塗料。溶剤にシンナーを使わない水性だから、有害ガスの発生や引火の心配もありません。難燃性1級認定も取得済みです。
さらに詳しい情報は、商品ページに記載しております。ぜひ、併せてご覧くださいませ。